フェンウェイパークの奇跡 | 第61話
1回の表
マーチンはベンチの中を見渡し頭を抱えた < これはまずいぞ… >
ベンチ入りした選手は、誰彼となく つかまえては、互いに大声で励ましあっている。
選手たちは、それだけでは足りないと思い、
自分自身に気合いを入れ、にぎり拳を作っている。
レッドソックスたちは試合開始の何時間も前から、緊張し神経質になっていたが、
今は それが、はなはだしくなり、爆発寸前のところまできている
マーチンは 野球界で選手時代も含め、かれこれ30年生きてきた。
開幕試合に挑む気持ちだけはルーキーの頃と すこしも変わっていない。
<興奮して、一睡も出来なかったなあ―……>しかし今の現状は質が違う。
マーチンは “はっ!” となりベンチの中をもう一度見渡した。
<それにしても、この興奮ぶりは異常としか思えない…… >
選手達を異常とも思える興奮状態に駆り立てるのは、
忍者の電撃契約から続く忍者フィーバーだ。
忍者がレッドソックスに入団してからというもの
レッドソックスは、一夜にして、世界中の野球ファン
いやスポーツファンの注目の的になってしまった。
レッドソックスたちは、
毎日・毎日 世界中から押し寄せる信じられないほどの異常な数の報道陣に囲まれ、
休む間も与えられず、朝から晩まで、
まだ会ったこともない忍者への質問攻めを受けてきた。
試合開始5時間前のことだった。
カウボーイが自慢のロールス・ロイスを駐車場に停め、
入ロに向かって自信漫々に大股で歩いて行く
それを見つけた 報道陣の一人が 声をあげた
「あっ! カウボーイだ!」
< けっ ! 可愛い奴等だ ! >満足げな表情を浮かべるカウボーイ
< ゛ 忍者 忍者 ゛ と騒いじゃいるが、
結局のところ 俺様のことを 首を長くして待っていたんだな
無理もねぇーやな、俺様は正真正銘、混じりっけ無しのスーパースター !
どこの馬の骨ともわからねぇー 話題作りの忍者とは格が違うぜ ! フン ! >
カウボーイは ニンマリした顔で片手を挙げた
出入り口にたむろしていた50人ほどの記者が
カウボーイに殺気だった視線を向けるや 一斉にカウボーイに向かって走りだした。
出てくるわ 出てくるわ、50人ほどの記者ばかりではなく、
球場の中からも200人ばかりの記者が、カウボーイ目掛けて突進してきた
< なっ… 何だ… この数は! どこから わき出てきやがったんだ…… >
カウボーイは 思わず 後ずさりをした
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