フェンウェイパークの奇跡 | 第54話
朝早くシゲたちは 桜の木を探しにボストンの街を散歩した
「兄者!昨日 云いましたが、ボストンの事は、おいら八兵衛様に お任せあれ。
桜の木がある良い場所を 見つけて参りましたので」
<また始まった>
<本当に大丈夫なのか>
「もう見つけてきたのか さすが八兵衛だな。 八兵衛がいると 心強いよ」
とシゲは 心底 感心している
「よして下さい 兄者 そんなに褒められたら 恥ずかしいじゃ ねぇーですか、
弱ったなこりゃー 参ったなぁー」 と八兵衛は満更でもない
シゲたちは 八兵衛の後について歩き出した
すると 10分もしない内に
「あっ 兄者 あの二本の木を見てください
あの片方の木、あれは間違いなく 染井吉野です」と餓狼が指差し云った
「そうか じゃ 行ってみよう 」とシゲ。
「本当か? 餓狼 お前 いい加減なこと云ってるんじゃ ねぇーだろうなぁー。
ここからじゃ よく見えねぇーぞ 」と八兵衛が云う
「八兵衛。 お前は、頭だけじゃなく、眼もわるいのか?」と餓狼が云う。
「八兵衛、文句を云うなら 来なけりゃいい。 兄者、行ってみましょう 」
と猛虎が云う
「あっ 兄者 もっと いい場所があるのにー」と八兵衛
ここにシゲたちが 塀を飛び越えて施設に入る事を書く
暫くして、バットを持った男を先頭に
十数人の子供たちが施設の玄関から出てきた。
「あっ、忍者シゲだ」と云って子供達が指差した
「忍者シゲが、四人いる。」と走り寄って来た。
「ローパー先生、この人はレッドソックスのピッチャー忍者シゲだよ」
と子供達は云った
シゲは、先生と子供たちの様子を見て、ここは子供達を預かる施設だと思った。
「この桜の木が何か?<花は咲いてないのに…>」とローパーは尋ねた。
シゲは桜の木に眼をやり、
「桜の木を見るのは初めてなんです。 もう少し見ていても構いませんか 」と聞いた
ローパー先生は、シゲの意外な申し出に、強張った表情が、穏和になった。
「いいですよ、ゆっくりしていって下さい。 さぁー教室に戻って掃除の続きだ」
と先生は子供達に云った。
シゲ達は桜の木の下であぐらをかいて座った。
「兄者。 染井吉野は 日本の桜です 」と餓狼が云う
「日本の桜」
「そうです」と猛虎
「染井吉野の花びらは薄いピンク色をしているそうです
綺麗な花が咲くんでしょうね」と餓狼は気持ち良さそうだ
シゲは桜の花びらが風に乗ってひらひらと落ちていく様を想像した、
<毎年゛見事に咲いては、潔く散る゛… 俺達人間に何かを言いたいのだろうか…?>
とシゲは 染井吉野を見上げて思った。
施設のチャイムが鳴った。
シャロンが、四人の前に歩いてきた
四つの影は 立ち上がり一礼をした。
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