フェンウェイパークの奇跡 | 第52話
3月26日 深夜のFwp
「餓狼 猛虎 八兵衛。 春は もうそこまで来ているんだろうか… 」
< まったくもぉー、兄者は 何も知らねぇーんだな 春は6月まで来ねぇーのに…>
と八兵衛は、ちらっと シゲを見た。
「日本では 春には 桜が咲くらしい、俺は、桜を写真でしか 見たことがない
一度 本物を見てみたい 」と星空を見上げてシゲは云う
「ボストンでは 桜が咲くのだろうか … ?」とシゲは 呟いた。
「ひょっとすると ボストンでも桜が咲くかもしれませんよ」と猛虎が答えた。
「そうだといいな、明日 ボストンの街を散歩してみるか」とシゲは云い、
忍者島の地酒を 大きな盃になみなみと注ぎ 猛虎と餓狼、八兵衛に廻した
< 猛虎の野郎は バカじゃないのか ! なにが ゛ ひょっとすると ゛ だ。
ワシントンでの 日本の桜・染井吉野の花見を知らねぇ―のか!
本当にバカな野郎だ > と八兵衛は猛虎を睨んだ
< 兄者も兄者だ。 少しはアメリカの事を勉強して来なきゃ、
恥をかく事になるのに……>
と八兵衛は、シゲを横眼でチラチラと見ている
シゲは 謎の忍者軍団の後継者ではあるが、これまで上下関係など一切考えた事がない
シゲたちは 幼馴染であり、まったくの対等なのだ。
そこにいるのは男と男、そして、男と女。
三人はシゲに対し、呑み仲間のような気易さがあるので 酒は実に旨くなる。
「 兄者、散歩するって…… どこか…… 心あたりでも…… 」と八兵衛が聞く。
「 いや 気の向くままに歩こうかと 」シゲは云う。
「困るなぁー 兄者、 誰か忘れちゃー いませんかってんだ!」
と八兵衛は、シゲを見て云った。
「おお、そうか そうだったな、八兵衛ならボストンは詳しいはずだな」とシゲ
「詳しい なんてもんじゃー ねぇですぜ 兄者
ボストンと云やぁー 八兵衛様、 八兵衛様と云やぁー ボストンと、
相場は決まってますがなぁー」と八兵衛は、ふんぞり返って笑った
<また始まった…>
<俺は知らねーぞ> 餓狼と猛虎の二人は お互い目で会話した
シゲたちは、昔話に花が咲いた
物音一つしないFWPに、笑い声が響いている
猛虎と餓狼、八兵衛は、
この なんとも言えない、シゲとの安らかな時を 一番楽しみにしている
この至極の時があるから、三人はシゲの側に居るんじゃないかと思う時もある
しかし、この安らかで、ゆったりとした時の流れも いつまでも続かなかった
「おいでなすった」とシゲは 大盃に残った酒を一気に飲み干し、
背の竜虎狼の柄に手をやり、いきなり抜刀した。
猛虎・餓狼・八兵衛も、立ち上がり三塁側ベンチの方に眼をやる
風魔の刺客と思われる八つ影は シゲ達の酒宴の席に切り込んできた。
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