フェンウェイパークの奇跡 | 第42話
「おい!餓狼・猛虎。これからは、天下の八兵衛様が殿を務める。
お前達は兄者の側にピタッと付いて、護衛をしながら先に行け。分かったな!」
と八兵衛は、胸の前で腕を組み、目を細めながら満月を見つめ云った。
そして、餓狼と猛虎を睨み。
「二人とも抜かるんじゃねぇーぞ エッヘン」と八兵衛は踏ん反り返って云った。
「八兵衛!お前は何をバカな事を云ってるんだ。
ここに立ち始めて三日目に根を上げるような奴に、殿など勤まる筈がないだろう。
ここは三銃士筆頭の餓狼様に任せておけ。分かったな!」と餓狼が云った。
「餓狼! どうして お前が三銃士筆頭なんだ? 兄者の代わりに
殿<しんがり>が つとまるのは勇猛果敢な猛虎様を置いて他にいない。」と猛虎
「お前達二人は、頭が どうかしてるのか ?
゛何が筆頭だ、何が勇猛果敢だ゛ 笑わせるな!
二人とも明日一番に病院に行って、そのスイカ頭を診てもらえってんだ。」
「何だと!」と餓狼が八兵衛の胸倉を摑んだ。
「何だ餓狼!やるのか!」八兵衛も掴み返す。
「まぁまぁ、そうカッカするな」と猛虎が2人を引き離そうと近づくと、
餓狼と八兵衛は片方の手で猛虎の胸倉を掴む。
「何が勇猛果敢だ!」
「うるさい、何が筆頭だ!」
「頭がおかしいのは八兵衛、お前だ」
「何だと!」
「何だと!」
「何だと!」
三人は、押しくら饅頭を始め出した
<餓狼・猛虎・八兵衛…… ありがとう……
お前達は絶対に死なせない…… 絶対に!……>
シゲは 夜空に浮かぶ 青白い光を放つ満月に目を移した。
<絶対に失敗は許されない。>
命を預かる怖さを、シゲは 今、それをひしひしと感じている。
<不安だからこそ万全を期す、その不安は俺達に、必ず力を与えてくれるはず……>
満月は 優しい顔をして忍者たちを見つめている
しかし、ものの一時間もしないうちに、
静寂に包まれていた深夜のFWPに、突然 変な音が響きだした。
ぐーごー ぐーーごーー ぐーごー。
< 何の音だ……? > シゲ・餓狼・猛虎は、あたりを見渡した。
<また こいつか……>
< この野郎…… >
八兵衛が、イビキをかいて 船を漕ぎ出したのだ。
<よく立って居眠りなんぞ出来るもんだ……>
餓狼は呆れた顔をして、八兵衛を見つめている。
<さっきの威勢は何処に行ったんだ…… ふざけやがって…… >
と猛虎は八兵衛を睨む。
<俺の悪い癖だ… 夢中になると前後の見境がつかなくなってしまう ……
しかし、今のような精神状態になっているのは、これが生まれて初めてだ・・・>
とシゲは 目を閉じた。
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