フェンウェイパークの奇跡 | 第41話

2023年1月18日

「うるさいぞお前達! おいらは、兄者の身体の事を思って云っているんだ。

 

兄者のことが心配で心配で、夜もおちおち眠れないんだ」と涙ぐむ八兵衛

 

「ありがとう八兵衛、八兵衛がいるおかげで、いつも場が和む。

 

餓狼、猛虎、お前達もそう思うだろ」

 

シゲの思わぬ問いに戸惑う二人。

 

3月23日 深夜

 

「そらみろ、お前達、よーく聞いておけよ、兄者の ありがたーいお言葉を!

 

兄者だけだ、おいらのことを心底分かってくれるのは!」

 

八兵衛は目に涙を一杯溜めている・

 

<また、始まった……>と餓狼と猛虎は露骨に嫌な顔をしている。

 

「兄者!」 と八兵衛は大声を出し真剣な眼差しでシゲの後姿を見つめた。

 

「びっくりするじゃないか。ここではあまり大きな声をだすな.」

 

とシゲは振り向いて云った。

 

「兄者 ! オイラを、兄者のために死なせてくれ!」

 

と八兵衛は 真剣な眼差しでシゲを見つめる。

 

<このバカ、急に何を言い出すんだ>餓狼と猛虎は、呆れた顔をした。

 

3月23日 深夜

 

「おいおい、八兵衛、いつも云っているだろう、

 

生きて、生きて、生き抜いてこそ忍者だ。 滅多な事はロにするな。」

 

とシゲは八兵衛を見つめた。

 

八兵衛は 急にその場に跪いた。

 

「兄者!恐れながら申し上げまする」と八兵衛は、あらたまって兄者に問うた。

 

<また、始まった……>

 

<いい加減にしろ…>餓狼と猛虎は 露骨に嫌な顔をして八兵衛を睨んだ。

 

「どうした八兵衛、あらたまって。」

 

「生きて、生きて、生き抜いてこそ忍者…… と兄者は、おいら達によく仰います。

 

でも、兄者の方は どうなんです?

 

戦場では、兄者は、いつも おいら達に

 

「先に行ってろ」

 

「先に帰ってろ 」 と云っては、一人で殿<しんがり>を務めている。

 

兄者! 云ってる事と、やってる事が違うんじゃねぇーですか 」

 

と八兵衛はシゲを睨んだ。

 

「それはな八兵衛」とシゲが言いかけると餓狼と猛虎がたたみかけるように言った。

 

「八兵衛、兄者の気持ちを察しろ」と餓狼

 

「お前には、デリカシーというものが無いのか」と猛虎

 

「決めた! オイラ  兄者の為に、ここで死ぬ!

 

よぉーし! そうと決まったら、矢でも鉄砲でも持ってきやがれってんだ。」

 

と八兵衛は立ち上がって叫んだ。

 

餓狼と猛虎は呆れてものも言えない。

 

二人は顔を見合せ、お互い目で会話した。

 

< よく ここまで、おべんちゃらが云えたものよ…… >

 

< 口から生まれた八兵衛とは、よく云ったものだ…… >

 

< ひょっとしてコイツ、アカデミー賞主演いや、助演男優賞を取れるのでは……>

 

<あり得る!>