フェンウェイパークの奇跡 | 第40話
「お前たちは、ここに立って今日で20日近くになるだろう。
よく我慢しているよなぁー。
おいらは まだ3日目だけど、もう根をあげそうだよ。
兄者は、どうしてこんな薄気味悪くて、
おまけに凍えそうなグランドの上に立つことを、思いついたんだろう、
何か意味でもあるんだろうか…
お前たちは 何か聞いてないのか 」と八兵衛は二人を見た
餓狼と猛虎は あいも変わらず黙ったままで前を向いている。
「兄者の悪いクセ なんだよなあ―。 子供の頃から1つのことに夢中になると、
前後の見境がつかなくなってしまうんだから。 あれは いつ<何時>だったっけ
〃鯛を釣って親父に食べさせる〃と云ったまでは、
さすが兄者と惚れ直したんだけど、それからがいけない。
三日三晩、寝ずの釣りだ。
兄者は糸を垂れてから ひと言も話さずに海を見ていたもんなー、
こちとら三日目に意識が朦朧となるや.すかさず波にのみ込まれ、
危うく死ぬところだったもんなーついていけないよ 」と八兵衛は ため息をついた
猛虎がギロリと八兵衛を睨み云った。
「兄者は ついて来いとは云わなかった 」
<うっぐっ…> 目をむく八兵衛
「そして、三日目に鯛を釣った」と餓狼も八兵衛を睨んだ。
「でも、ものには限度がある」
「兄者は ついて来いとは云わなかった」
「そして、三日目に鯛を釣った」
「そうです、そうです、兄者は凄い、偉い、たいしたものです」
「八兵衛、俺が偉いのか?」
「あっ! 兄者」と驚く八兵衛。
「偉いも何も、凄いの一言につきますぜ。
こんな薄気味悪い球場に毎晩来ては.何をするでもなく、
ただひたすら 立つだけ。 ここで立つことに、
どんな意味があるんです?」と八兵衛が問うた。
「意味か…… ? うーん…意味などない」とシゲは困った顔をした。
「意味がない??」と目を剥く八兵衛
「立つしか、ここに いる事しか 方法が思いつかないんだ」とシゲは答えた
「じゃー、4人で先発投手のようにローテーションを組めばどうです。
ひとりは立ちあとの三人は休むと」と八兵衛は云った
「八兵衛よ。無理はしなくていい、気が向いた時に来ればいい」
とシゲは笑って云った。
「兄者の言う通り、もう帰って寝ろ!」と餓狼は素っ気なく云う
「熱いシャワーが待ってるぞ!」と猛虎も続けた
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません