フェンウェイパークの奇跡 | 第37話
「皆さん、心配かけて申し訳ありません。
なんてったって兄者、忍者シゲは、当代随一の忍者でして、
一度姿を消したが最後、足取りを掴むことなど出来ません。
ですんで兄者からの連絡を待つしか方法がないんです。
ところが今朝ようやく、明日オーナー達を訪ねると云ってきましてね。
本当に困ったもんです。
明日3/3に、FWPに行くそうです。その時に契約して下さい。」と八兵衛は云う。
オーナーとGMは<シゲがどんなに凄い魔球を投げるとは云っても、
キャンプにも参加せずに果たして上手くやって行けるのだろうか…>
と不安になったが、
とにかく明日、球場に来ると言う八兵衛の云う事を信じて待つ事にした。
3月3日
FWPでのエキシビションゲームも終わり、クラブハウスに人気が無くなると
シゲが何処からともなくオーナー室のドアの前に姿を見せた。
シゲはドアをノックした。
中から片手に書類を持った秘書が「どうぞ」と言ってドアを開けた。
「キャーッ 」秘書は悲鳴を上げ書類を床に落した。
オーナーは イスから立ち上がり急いで秘書のもとへ走った。
「びっくりさすなよシゲ、」
とオーナーは云って重厚なオーナー室の扉を開けシゲに向かって手招きした。
シゲはオーナーに 一礼して向かいに座った。
オーナーは直ぐさま 球団社長と GM.を部屋に呼び寄せた
すぐに二人はオーナー室にやって来た。シゲを見るなり懐かしそうな顔をした。
「元気そうじゃないかシゲ」と球団社長
「もう来ないんじゃないかと心配したよ」とGM
笑顔を返すシゲを見て三人は安心した。
「ところで、今どうなっているんだい ?」とオーナーはおもむろに聞いた。
「まだ はっきりとした事は言えないのですが、総帥が云っていたように
FWPに何かがあると私は思います。」とシゲは云う。
「やはり ! FWPに絡んでいるのか…… 」
とオーナーは窓からグランドの方に視線を向けて驚いた。
「そうです、フェンウェイパークのあちこちから、得体の知れないパワー、
我々にとって負のパワーを感じます。」
とシゲは答えた。
オーナーは眉間に皺を寄せて聞き返した。
「FWPの中に何か凄んでいると言う事なのか 」とオーナーはシゲに聞いた。
シゲはこっくりと頷いた。
「もうシーズンも始まる、球場のあちこちを取り壊す事は出来ない、
一体どうすればいいんだ。」とオーナーは不安な表情を浮かべシゲに尋ねた。
「球場内の得体の知れないパワー、
つまり負のパワーを感じるところを、今はまだ特定は出来ていません。」
とシゲは答え、そして続けた。
「たとえ場所を特定し、そこを壊したとしても
負のパワーは、すぐに別の場所へ移動するはずです。」とシゲは云った。
オーナーたちは、黙ってシゲの話を聞いている。
「それと、私が感じる負のパワーが、
ルースと関係があるのかどうか、それすら 今は分からないんです。」
とシゲは、云って困った表情をした。
「シゲ。とりあえず契約を済ませておこう。」
とGMは分厚い契約書をテーブルの上に置いた。
「それでは、簡単に説明しよう」とGMは契約書に手をかけた。
すると、「説明は要りません。」とシゲは云った。
「要らないの?」とGM。
「はい。契約内容は、皆さんにすべてお任せします。私が契約内容の説明を受けても、
多分、理解するまでには、時間がかかるでしょう。」とシゲは笑った。
「それよりも、お願いがあります。」とシゲ。
「何だ。」とオーナー。
「私は、バンビーノの呪いの真相解明の為に、レッドソックスと契約しました。
それは、チームの中で行動した方が真相解明には近道であると判断したからです」
とシゲが云うと、三人は頷いた。
「皆さん、FWPでの私の行動には一切干渉しないでほしい。」
とシゲが云うと、三人は目をむいて驚いた。
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