フェンウェイパークの奇跡 | 第31話
マーチンは、さっそく いつものようにガム1つを口の中に放り込んだ。
ルーキーのドセは そんな事は全然知らない。
ドセは2番打者を2球ファールのあと4球連続ボールで無死1、2塁とした。
当然マーチンは、2つ目のガムを口に放り込む。
ボストン大学の監督は3番打者に耳打ちした「いいか、2ストライク迄は打つな」。
マウンド上のドセは ふてくされた態度をとり、ぶつぶつ文句を云っている。
< どうして俺が アマチュアの相手をするんだ、…… >
何を思ったのかドセはランナーがいるのを忘れワインドアップから投球をはじめた。
ランナーはいっせいにスタートをきる。
そして ドセは、怒りにまかせて投げた160Kmの剛速球が打者に向かって突き進む
“あっ あぶない !" しかし 打者は、今まで見たこともない唸りを上げる剛速球に、まったく反応出来ない。
ボールは打者の背中すれすれを通過しバックネットにぶち当たった。
はねかえったボールは、何かに当たったのか一塁ベンチ方向に転がる。
三塁ランナーはホームイン、2塁ランナーは3塁を回りホームに突っ込む、
ミラベリはボールに追いつき、すぐさまふり向きホームを見て驚いて投げるのをやめた。
ドセはバックアップに入っていなかったのだ。
ドセは マウンドに突っ立ったままミラベリを見ている。
ヤング投手コーチはマウンドへすっとんでいった。
「どうしたんだ ドセ」
「いや… 何でもない…… 今日はもういい…」と言ってドセはマウンドを降り ベンチへ行く。
マーチンは ガムをはき出し、ベンチに戻ってきたドセに云った。
「どうしたんだ、何処か調子でもわるいのか?」
ドセは何も言わずに座り バスタオルに顔をうずめた。
ヤング投手コーチは マーチンに必死でドセの体調が悪かったことを訴えた。
2日後ドセはインディアンス戦に8回からリリーフとしてマウンドに立った。
Redsoxが8点リードし、試合は、ほぼ決着している状況。
「この状況なら 伸び伸びと投げれるだろう」
とマーチンはプレッシャーのかからない場面で ドセ本来の投球を見せてくれる事を期待した。
しかし、ドセはまったくやる気にならない。 < もう試合は 決着しているじゃないか…… >
ドセは1イニングを投げて2四球と ヒット2本で2点を失いまったく良いところを見せずに降板した。
それから3日間 ドセにお呼びはかからなかった.
ドセはその間ランニングと投球練習に明け暮れた。
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