フェンウェイパークの奇跡 | 第30話
「もういいドセ、かわれ ! ブルペンに行って投げ込みをしろ ! 」
とゴルビーは怒鳴った。
「あの小僧、凄い速球を投げやがる。 しかしなぁー、あのコントロールじゃ…………ヤングコーチ、何とかならんか?」
「私の考えでは 何とかなると思います。」
「本当か!」
「ハイ ただ…… 監督の……」
「なんだ、俺がどうした」
「監督のロの中に放り込む…… ガムの数が……」
「ガムの数…… そんな事で済むのなら、俺は何個だってロの中に放り込む 」
「本当ですか」
「本当だ」
「わかりました」
エキシビションマッチに入ってもドセは メジャーに残った。
今日、レッドソックスは、毎年恒例になっているボストン大とのエキシビションマッチ。
ヤングコーチは、前日に ドセに今日の先発を言い渡していた。
ボストン大との試合前日
「明日の試合は ドセ、お前が先発だ!」表情がみるみる明るくなるドセ。
「俺が…… 何処とです」
「ボストン大学だ」
「ボストン大学 ! どうして俺がアマチュアの相手をするんですか?」
いっぺんに表情が暗くなるドセ
「そう深く考えるな 練習試合だ。頼んだぞ」
ヤングは、そう云うとマーチン監督のほうへ歩いていった。
< ちぇっ… 誰か他にいるだろう… どうして俺なんだ… >
ドセは やる気が無くなった。
試合当日 ドセは浮かない顔をしてマウンドに立ち投球練習をはじめた。
しかし、まったくストライクが入らない。
ミラベリは、ドセの速球を飛びつきながら捕っている。
ボストン大学のベンチから失笑が沸いた
レ軍ベンチの中からイライラして見つめるマーチン
12時 試合は始まった。 ドセは先頭打者をストレートの四球、
マーチンはいつものように、
直径2cmほどの野球ボールの形をしたガムが入つた箱を、バックから取りだした。
「監督 ! やけに大きな箱ですね、何が入っているんです。」
とミッキーがマーチン監督に聞いた。
「決まっているじゃないか、ドセ対策をしてきたんだ。
いくらなんでも、これだけあれば大丈夫だろう。」
マーチンは 投手が四球を1つだすたびに、野球ボールの形をしたガムを
1つ口の中に放り込む。
そのイニングが終わるか、投手が交代するまでガムを噛み続けている。
それは少しでもイライラを抑えるためらしい。
マーチンは覚悟を決めたのか通常の4倍 10個から40個にガムの数を増やした。
箱もそのぶん 倍ぐらいの大きさになった。
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