フェンウェイパークの奇跡 | 第23 話
オーナーたちは、八兵衛の身のこなしを見て
改めて八兵衛が忍者であることを認識しなおした。
三人は着替えを済ませ日本流のバスルームに向かった。
バスルームは、おとな七・八人位が入れるぐらいの木の囲いをしたバスタブに
湯を一杯に満たしてある。
三人はオケに湯を汲み出し、それを身体にかけ、
湯の中に ザブン と子供のように飛び込んだ。
「ふぅー、あぁー生き返った。忍者はいつもこうなんだろうか、
今の時代にまだ忍者同士の争いが有るなんて、どう言う事なんだ 」
とオーナーは夜空に向かって云った。
「どうなんでしょう、しかしびっくりする事ばかりです、
ここは想像を絶する世界ですね、参りました。」とGM
3人は一生分の肝っ玉を使い果たした顔をしている。
お互いの顔に生気がない事を感じていた。
三人は何も言わずに雲間に見え隠れする満月を眺めている。
<月を眺める人の気持ちはそれぞれだろう…>
しだいに夜空に浮かぶ満月を横切る雲が走馬灯のように見えだした。
すると、オーナーの脳裏に鮮やかに過去が浮かびあがってきた。
オーナーは幼い頃からレ軍と共にイバラの道を歩んできた。
その記憶が鮮明に蘇り、そして、それが脳裏をかけ巡った。
そして、ノスタルジアにも似た感情が胸に湧き出るのを覚えた感じた。
その感情には、何故かいつも心地よさが同居している。
<レッドソックスにようこそ…>とオーナーはシゲに云ったものの、
契約する相手は忍者である。
誰にとっても忍者とは不気味な存在、その不気味な者と契約する
<前代未聞の契約になるな…………>
<……しかし呪いは解いておかねばならん………ここは……>
「このまま何もしないのは、問題だな」
とオーナーは走馬灯雲<走馬灯のように見える雲>を見つめて
自分に言い聞かせるように呟いた。
去年WRS制覇を成し遂げたとは云っても、
それまでの長期低迷によりもたらされた閉塞感は、
そうは簡単に払拭出来るものではなかった。
そんな思いは、いつしか三人の共通認識になっていた。
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