フェンウェイパークの奇跡 | 第21 話
それを見計らってか八兵衛は、急に餓狼、猛虎の前へ進み出て、
散り散りになって逃げて行く刺客の背に向かって、二、三歩、大きく歩み寄り。
餓狼と猛虎の雄たけびの倍はあろうかと思われる強烈な雄たけびを上げた。
<なんだコイツ>餓狼と猛虎は軽蔑の眼差しを八兵衛の背中に突き刺した。
その後、何度となく弓矢が飛んでくるが餓狼と猛虎は難なく木刀で払いのける
「もう心配は御座らん」と八兵衛はオーナーたちに云うと龍虎狼を鞘に収め、
「口ほどにもない刺客どもだ」と云ってふんぞり返った。
とその時、またもや二本の矢が餓狼と猛虎に飛んできた。
餓狼は、龍虎狼で払いのけた。
しかし、猛虎は龍虎狼で矢の軌道を変えた。
「痛たたたたたた」と八兵衛はその場をピョンピョンと跳ねだした。
猛虎が、軌道を変えた矢は、八兵衛の尻に命中したのだ。
「餓狼・猛虎、しっかり払いのけろ
お客さんに当たったらどうするつもりだ。痛たたたた。」
と八兵衛は尻に手を当て、走って行った。
オーナー達は無事にこの危機を脱した。
「オーナー矢が飛んで来るのが見えましたか 」とGMは聞く。
「いや見えなかった」とオーナーは答えた。
「私もかすかに見えただけで、ほとんど見えませんでした」とGMはびっくりしている。
<餓狼・猛虎という男は、メジャーリーグにおいて物凄い打者になるのでは…>
と一瞬思ったが、それよりも自分の命のほうが大切だと思い、
必死で八兵衛の後ろに隠れていた。
ようやく戦いも終わりに近づきポッポッと影たちが集まってくる。
シゲは三人に近づき「もう大丈夫です、お怪我はありませんか、無いですよね
いえ、有りますか 」と三人のズボンをニコッと笑って見た。
三人はシゲの視線の先に眼を向けると、いつのまにか三人ともズボンが水浸しになっている、
その滴りは 足をつたって靴の中にまで及んでいる。
雨は降っていない、水溜まりを踏んづけた覚えも無い
三人は、余りの恐怖に漏らしてしまっていた。
シゲは気を利かして「日本流のバスを経験して下さい。八兵衛頼む」
と言って風のように茂みの中に消えた。
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