フェンウェイパークの奇跡 | 第17 話
三人は忍者らしくといっては失礼になるかもしれないが、
忍者料理は薄い味付けにすることで 魚や野菜の本来持つ味を一層引き立てている。
屋台八兵衛で食べるおでんの味付けに とても良く似ている
<この人達は 何から何につけて達人なんだ>
三人はお互いの顔を覗き込んで あらためて感心した。
「今日は本当にお互いの顔をよく見るなぁー」とオーナーは二人に云う。
「本当にびっくりさせられる連続ですね」と球団社長も参ったという顔をしている。
漸くオーナーたちが落ち着きを取り戻した頃に、
一人の忍者が足音も立てずに三人のテーブルに歩み寄った、
「シゲです、初めまして」と一礼した。オーナー達三人は、驚いて、眼の前の忍者を見上げた。
「私は、顔をお見せすることが出来ません。お許し下さい」
シゲは、忍者マスク <顔を覆っている布>を外していない。
シゲ達の忍者軍団には 代々伝わる<顔を見せてはならぬ>という掟がある。
次期総帥は人前で顔を見せることを禁じられている。
三人も立ち上がり自己紹介を始めた。
<ほぉー、この方がオーナー>シゲは オーナーに物静かな学者のような雰囲気を感じた
「総帥からだいたい話は聞いています。
それでどうですか私の魔球<まだま>は、メジャーリーグで通用しそうですか」とシゲは尋ねた。
「十分に通用します。」とGMが太鼓判を押した。
「忍者シゲ、ボストンレッドソックスにようこそ」とオーナは間髪を入れずにシゲに云い、
手を差し伸べて握手を求めた
オーナーはシゲにこれまでのボストンレッドソックスの歴史を簡単に話し始めた。
静かな語り口の中に 燃えるような野球への情熱、
そして 何よりにも増してレッドソックスへのひたむきな愛にシゲは圧倒された。
<今に至るまでは、さぞかしイバラの道だったのだろう……
レッドソックスファンといえば、レッドソックスネイションの国民と云われるぐらい
メジャーリーグ随一野球をよく知る目の肥えたファンと、
マスコミの厳しく容赦のない論調の中で生きてきたわけだ……>。
シゲは三人と話をしていく内に、これまで聞いていたオーナーの執念、
球団社長の闘争心、GM.の手腕をひしひしと感じた。
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