フェンウェイパークの奇跡 | 第 9 話
あっと云う間に両チーム入り乱れての殺し合いの開始だ。
<何て事だ!・…> <たっ…大変だ!・………>三人は、その光景を見て、顔面蒼白になった。
両チームは最終回まで互角に戦っていた、スコアは0―0
するとリリーフとして忍者シゲが登場する事になった。
「あれがシゲじゃ」と言って総帥が指差した。
忍者スタイルで顔は濃紺の布に覆われているので眼だけしか見えない、
いよいよシゲがマウンドに登った。
するとまわりの木々にとまっていた鳥たちが、空に向かっていっせいに飛び立った。
三人は、驚いて首をすくめ、辺りを見回す。
シゲは野球で言うセットポジションからの投球動作に入った。
三人はシゲがどんな凄い球を投げるのかと 固唾をのんで見守る。
そして、シゲは第一球を全力で投げた。
しかしシゲが投じたボールはふわっと山なりの軌道を描いて忍者打者に向かった、
「あれっ…」三人は失望した、
しかしボールは忍者打者の手前5メートル付近ぐらいから急激にジグザグ走行を始め出した。
「あっ ナックルボールだ!」とGMは大声で叫んだ。
ドスンという音とともに忍者打者の腹部にボールは当たってポトリと落ちた。
打者の忍者は、膝をつき蹲<うずくまる>っている。相当痛そうだ。
「
GM、うちのウェインが投げている、あの変化球か」とオーナーはすかさず聞いた。
「そうです、あれはまぎれもなくナックルボールです。ほとんど回転せずに
打者に向かってふわふわと蝶蝶のように飛んで行き、
ぐらぐらと揺れながらストンと急激に落ちました。
ウェインのナックルボールに匹敵する質の高いナックルボールです。」とGMは興奮して話した
棟梁はニコニコして3人の話を聞いている
そして、「さすがNCLAの奪三振王、肘のケガさえなければ
GMはメジャーリーグのドラフトでも、いの一番に指名されたじゃろう」
と総帥は残念そうに云った。GMはびっくりして総帥を見た。
肘の故障で野球を断念した事は、今迄 誰にも言った事はない
<何故 総帥は知っているのだろうか……>とGMは不思議に思った。
総帥は続けて言った「今の変化球は、メジャーリーグではナックルボールと言うが、
我々は、まだま<魔球>と言っておる、
空気抵抗を最大限に利用して、まるで忍者のごとく変幻自在に揺れ動くのじゃ」。
3人はお互いの顔を見て同時に「まだま… 」と声を上げた 「そうじゃ まだま じゃ」
オーナーは今初めてシーズンが始まり、
忍者がメジャーリーグのマウンドに立っている事を想像する事が出来た。
すると何処からともなく1人の忍者が現れて「まだま・魔球」の物理学的な解説を始め出した。
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