フェンウェイパークの奇跡 | 第 6 話
「シゲに会うのは、早い方がいい」
と総帥は ひと息つく間もなく 3人を島の頂上まで連れていった、
そこは木々を伐採してグランドのようになっていた。
そして三人が最初に眼にしたのは長方形のグランドだった、
白色と赤色の忍者服を着た者達およそ20名程が
敵味方に分かれて一つのボールを奪いあっている。
「忍者はアメフトもするんですか?」とGMは驚いている。
少し行くと、なにやら野球場の様なものが見えてきた。
よく見ると赤と白の鉢巻をした忍者たちがグランドでキャッチボールをしている。
忍者同士が向き合って対決しているように見える。
三人はグランドを見渡し、すぐに違和感を感じた。
<あれっ……バッターボックスが描かれてない……>
「総帥!バッターボックスは描かないのですか?」
とGMは怪訝な表情をして総帥を見て云った。
「MLBでは、打者は、バッターボックスの中で投球を待つことになる。しかし、
ここ忍者野球では、ホームベースはあるが御覧のようにバッターボックスは無い。
打者はホームベースをまたいで投球を待つことになる、」と総帥は云った。
「まっ、 またいで!…… てすか?」 とGMは、眼を剝いて驚いた。
「そうじゃ」と総帥は頬笑んだ オーナーたちには、まったく訳が分からない。
<一体どんな野球をするつもりなのだろう……>三人は、お互いを見て戸惑った。
「つまり、こういう事なのだ。忍者野球とメジャーリーグの一番大きな違いは
打者は 投手と、生きるか死ぬかの決闘をするという事なのだ。」と総帥は云った。
「けっ、決闘」とオーナーが云うと総帥は、うなずいた。
「我々は、忍者の修行のひとつとして野球を取り入れた以上、
単なるゲームでは終わらせていない。」と総帥はキッパリと云い切った。
「ここでのルール、即ち 忍者野球のルールを少し説明しておこう 」と総帥は云った
「忍者打者のストライクゾーンは、内外角はMLBと同じ、
しかし、高低は、忍者打者の爪先から頭のテッペンまで 」
忍者打者はホームベースをまたいで投球を待つ。
その時、忍者投手が投球をした場合。次の四つ事が考えられる
「①忍者打者に当たる」
「②忍者打者が打つ」
「③忍者打者が投球を空振りや見逃し、または避ければ
球がストライクゾーンを通過してストライクになる」
「④投球がボールになる」
①投球が忍者打者に当たる
「投球が忍者打者に当たれば、デットボールになり、 メジャーリーグでは、一塁へ進塁するが
忍者野球ではアウトになる。」
「デッドボールがアウトですか?」GMが驚いて聞き返した。呆気にとられるオーナーたち。
「そうじゃ」と総帥云う
「忍者打者が空振りした後に、球が身体に当たった時も、
野球ではストライクになるが、忍者野球では、アウトになる。
②投球を忍者打者が打つ
忍者打者はフェアーゾーンに打たない限り、忍者打者はアウトになる。
③忍者打者が投球を空振りや見逃し、または避ければ
ボールがストライクゾーンを通過する」・・・・・・
この場合は忍者打者はアウト、そして、退場になる。その上 3試合の出場停止になる、
「自分に向かってくるボールを避けたら退場、
それも三試合の出場停止ですか?」とGMは総帥に聞きなおした。
総帥は頬笑んだ。「3試合の出場停止だけではなく、3日間の断食にもなる。」
「3日間の断食……」三人は唖然として言葉が出てこない。
「忍者打者は断食にならないように、必死に球に食らいつく」と総帥は云い笑った。
「忍者投手は、打者に対し、2球まで投げることが出来る。
2球ともボールならMLBで云う四球になり、打者は一塁へ行く。」
「忍者投手にとっての一番の目的は、忍者打者に、ボールをぶつける事なんじゃ」
「えっ、ぶつける……」三人は総帥の言葉に狼狽した。
「忍者打者にとっての一番の目的は、自分に向かって来るボールに対して、
いかにしてフェアーゾーンに打ち返すかなのだ。」
「ご存じのように、忍者には、手裏剣投げという、
殺傷能力のある刃物・ナイフのようなものを敵にぶつけ、ダメージを与える殺人技がある。」
「忍者映画で見たことがあります。」とGMは云い、三人は、大きくうなずいた。
「皆さん、ボールを手裏剣に置き換えれば、理解していただけると思います。」
「忍者投手の投球<手裏剣>を忍者打者<ストライクゾーン>に投げた時に、
忍者打者が打ち損じたり、空振りしたり、見逃すことは
敵の手裏剣攻撃を防ぎきれなかった事になる。」
「戦闘の状況にもよるが、忍者が戦闘中に、
もし自分に向かって来た手裏剣攻撃を防ぎきれなかったら どうなる?」 と総帥は三人に問う
<………> 3人は何も言わない。
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