フェンウェイパークの奇跡 | 第 3 話

2022年7月28日

すると、球団社長がオーナーを見て云った

 

「その時に私は予告ホームランを出張先のホテルのテレビで見たのですが、

 

チェックインする時に フロントの者が

 

「テレビが故障しておりますので別の部屋をご用意しましょうか?」

 

と云ったのを、私は断ったのです」と球団社長は云った。

 

「私も、ルースの予告ホームランの事ははっきりと覚えています。」

 

とGMは神妙な面持ちで話しだした。

 

「私は、その時パソコンで書類を作っていました、疲れてウトウトしていた時に、

 

バチバチという音がして、驚いて画面を見るとルースが映っていました。

 

ルースは、ホームランを打ってホームベースを踏んで、

 

それからテレビカメラに向かって来たんでしょう、

 

画面いっぱいにルースの顔が映し出されて、何か云ったんです、えーと何だっけ

 

この時、確かルースはホームランを打ったのに悲しい顔をしていたのが印象的でした

 

何だっけなぁー」

 

「Help me…」 オーナ-と球団社長はお互いを見つめて声を揃えてGMに云った。

 

「ベーブ・ルースといえばバンビーノの呪いですね」と三人の話を聞いていた、

 

屋台の店主の八兵衛が口を挟んだ。ハッとなり顔色を変えた三人は八兵衛を見た。

 

「私の第六感ってやつで申し訳ないんですが それはベーブ・ルースからのメッセージでは?」

 

と八兵衛は云った

 

「メッセージ?」と三人は口を揃えて聞く。

 

「ベーブ・ルースが、あの世からテレビを使って、

 

レッドソックスのオーナー・球団社長・GMに何かのメッセージを送ったんじゃないでしょうか?」

 

「一体 何のメッセージなんだろう ?」とオーナーは云った

 

「それは私には分かりません」と八兵衛は 三人のお猪口を覗きこんだ

 

「トレードに腹を立てたルースが レッドソックスに呪いをかけたと聞いているのだが…」

 

球団社長は呟いた しばし 三人に沈黙が続いた

 

「あっ、そうだ。明日 忍者の総帥がこの屋台に来ます。一度話をされてみればどうでしょうか」

 

と八兵衛は思わぬ事を言い出した

 

「 忍者の総帥に ! 」とGMは驚いた。

 

「そうです 忍者に……です。」と八兵衛は、眼光を鋭くして云った。

 

「総帥なら呪いをかけたり、解いたり出来るはずです。」

 

「どう思う」と沈んだ声でオーナーは二人のほうを、ちらっと見て云った。

 

「ベーブ・ルースの映像は、呪いと何か関係があるかもしれません」とGMはいった。

 

球団社長も頷いた。<やはり…二人も…>。

 

「八兵衛さんも忍者なの?」とオーナーは八兵衛に聞いた。

 

八兵衛は黙って 意味ありげな目をして微笑んだ

 

「バンビーノの呪いの事は、これまで何度も耳にしたことがあります。

 

総帥に会ってみてはどうでしょう ? またとないチャンスだと思うのですが。」と八兵衛は云う。

 

「忍者……」三人は困惑の表情で、八兵衛を見た。

 

そして、オーナーは間髪を入れずに云った。「忍者の総帥に会わせてもらいたい」

 

「分かりました」と八兵衛は返事をした。

 

「忍者の中には 呪いを懸けたり、解いたりする者もいます  ボストンレッドソックスにベーブ・

 

ルースが本当に呪いをかけているのなら、総帥なら、きっとその呪いを解いてくれるはずです

 

明日の午後10時頃、ここに来て下さい。これも何かのご縁があったのでしょう。」

 

と云って八兵衛は三人のお猪口を覗き込んだあと 徳利で酒を注いでいった。

 

<……総帥なら、まず間違いなく呪いの原因を突き止め、その呪いを解くはずだ……>

 

と八兵衛は思った

 

午前一時、最後のお客にサヨナラを云った八兵衛は屋台をたたみ、

 

忍者スタイルに着替え総帥の所に風のように走っていった。