フェンウェイパークの奇跡 | 第 3 話
すると、球団社長がオーナーを見て云った
「その時に私は予告ホームランを出張先のホテルのテレビで見たのですが、
チェックインする時に フロントの者が
「テレビが故障しておりますので別の部屋をご用意しましょうか?」
と云ったのを、私は断ったのです」と球団社長は云った。
「私も、ルースの予告ホームランの事ははっきりと覚えています。」
とGMは神妙な面持ちで話しだした。
「私は、その時パソコンで書類を作っていました、疲れてウトウトしていた時に、
バチバチという音がして、驚いて画面を見るとルースが映っていました。
ルースは、ホームランを打ってホームベースを踏んで、
それからテレビカメラに向かって来たんでしょう、
画面いっぱいにルースの顔が映し出されて、何か云ったんです、えーと何だっけ
この時、確かルースはホームランを打ったのに悲しい顔をしていたのが印象的でした
何だっけなぁー」
「Help me…」 オーナ-と球団社長はお互いを見つめて声を揃えてGMに云った。
「ベーブ・ルースといえばバンビーノの呪いですね」と三人の話を聞いていた、
屋台の店主の八兵衛が口を挟んだ。ハッとなり顔色を変えた三人は八兵衛を見た。
「私の第六感ってやつで申し訳ないんですが それはベーブ・ルースからのメッセージでは?」
と八兵衛は云った
「メッセージ?」と三人は口を揃えて聞く。
「ベーブ・ルースが、あの世からテレビを使って、
レッドソックスのオーナー・球団社長・GMに何かのメッセージを送ったんじゃないでしょうか?」
「一体 何のメッセージなんだろう ?」とオーナーは云った
「それは私には分かりません」と八兵衛は 三人のお猪口を覗きこんだ
「トレードに腹を立てたルースが レッドソックスに呪いをかけたと聞いているのだが…」
球団社長は呟いた しばし 三人に沈黙が続いた
「あっ、そうだ。明日 忍者の総帥がこの屋台に来ます。一度話をされてみればどうでしょうか」
と八兵衛は思わぬ事を言い出した
「 忍者の総帥に ! 」とGMは驚いた。
「そうです 忍者に……です。」と八兵衛は、眼光を鋭くして云った。
「総帥なら呪いをかけたり、解いたり出来るはずです。」
「どう思う」と沈んだ声でオーナーは二人のほうを、ちらっと見て云った。
「ベーブ・ルースの映像は、呪いと何か関係があるかもしれません」とGMはいった。
球団社長も頷いた。<やはり…二人も…>。
「八兵衛さんも忍者なの?」とオーナーは八兵衛に聞いた。
八兵衛は黙って 意味ありげな目をして微笑んだ
「バンビーノの呪いの事は、これまで何度も耳にしたことがあります。
総帥に会ってみてはどうでしょう ? またとないチャンスだと思うのですが。」と八兵衛は云う。
「忍者……」三人は困惑の表情で、八兵衛を見た。
そして、オーナーは間髪を入れずに云った。「忍者の総帥に会わせてもらいたい」
「分かりました」と八兵衛は返事をした。
「忍者の中には 呪いを懸けたり、解いたりする者もいます ボストンレッドソックスにベーブ・
ルースが本当に呪いをかけているのなら、総帥なら、きっとその呪いを解いてくれるはずです
明日の午後10時頃、ここに来て下さい。これも何かのご縁があったのでしょう。」
と云って八兵衛は三人のお猪口を覗き込んだあと 徳利で酒を注いでいった。
<……総帥なら、まず間違いなく呪いの原因を突き止め、その呪いを解くはずだ……>
と八兵衛は思った
午前一時、最後のお客にサヨナラを云った八兵衛は屋台をたたみ、
忍者スタイルに着替え総帥の所に風のように走っていった。
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