フェンウェイパークの奇跡 | 第28話
キャンプに、これほど多くの報道陣が大挙押し寄せた原因は、
ドーセット ・ カウボーイ・ジャクソンだけではなく もう一つあった。
去年カウボーイ・ジャクソンの入団会見があったクリスマスあたりに
ボストンの街に まことしやかな噂が流れた事も要因の一つだった。
その噂は、"忍者が来る" と云うものだった。
何処からこんな噂が流れたかは定かではないが.
当初、日本野球界のスーパースターが
フリーエージェントでレッドソックスと契約すると思われていたが.
そうではないことがわかり、一時 噂は立ち消えた。
しかし、カウボーイ・ジャクソンのストロー発言後、
再び 噂がまことしやかに囁かれだした。
ドーセット、カウボーイが動けば報道陣もつられて動き出す。
しかし約1/3の報道陣はカウボーイ・ドーセには目もくれず
いつもキャンプ地の至る所に目を配っている。
キャンプも1クールを終えた頃。
ドセは フリー打撃に投げるように云われた
「ドセ、打者が立たないと集中出来ないと云っていたな !
今日は打者に投げるんだから問題はないはずだ。
ドセ、少しは良いところを見せろ! このままじゃ下に行くことになるぞ !」
とゴルビーはドセにハッパをかけた。
横でヤング投手コーチは苦笑している。
ドセはマウンドに立ちロジンを手にした。
打者が打席に立つとワインドアップから第一球を投げた。
空気を切り裂く音が大きく響く。
“ゴーン" ボールはバッティングゲージの鉄パイプに直撃、
跳ね返ったボールは 再びドセに戻ってきた
「おおっー、凄い速球だ!」
「あの小僧、洒落た事するじゃないか!」
「あんなすごい芸当ができるほどのコントロールをもっているのか! 」
「さすが100年に1人の逸材だ!」と報道陣はざわつく。
「ドセ ! 何をしている、ストライクゾーンに投げろ !」
とゴルビーはイライラしている
2球目は、ゲージのネット最上部に直撃。
<あれっ……>
3球目、今度はゲージのはるか上を行き バックネットにぶち当たった。
<なんだっ…… さっきのは…… まぐれ ?……>
<何が 打者が立つだ !
ゲージはあるわ、ゲージの後ろにはバカみたいに人がいる。全然緊張しないぜ」
と ふくれっ面のドーセット
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