フェンウェイパークの奇跡 | 第35話
「しかし…」と餓狼と猛虎は云うが、後の言葉が続かない。
「いいから帰るんだ」とシゲはもう一度云う。
「総帥のお気づかいです。 俺達は兄者と一緒に死ぬつもりです」と餓狼は しつこく食い下がる
「バカヤロー、死んでもいいのか!」とシゲは二人に 詰め寄る。
二人は思い詰めた眼をしてジッとシゲを見つめる。
「勝手にしろ 」とシゲは帰すのをあきらめた。
これまで餓狼と猛虎は 死が迫り来る危険な状況であっても、いつもシゲの側に居る事のほうを選んできた。
2人はいつも、己が死ぬ事よりも シゲと共に行動する事の方が 名誉であると考えている。
シゲは、餓狼と猛虎の性格は熟知している。
二人は 一度言い出したら、シゲが何を云っても聞く耳を持たない。
2人は゛兄者は俺達が、命を賭けて守り抜く ゛と肝に銘じているからだ。
シゲは、複雑な気持ちになった。
これまでシゲたちは、忍者<人間>を相手にしてきた。
しかし、これからはシゲたちの想像を遥かに超えた魔物を相手にしなければならないかもしれないからだ。
シゲは、餓狼・猛虎を守りながら、バンビーノの呪いの真相解明に取り組まなければならなくなった。
3月2日午前零時、
シゲ達三人は、すぐさま靄の漂うフェンウェイパークの中に忍び込んだ。
シーズン中は熱狂的な歓声を生む空間<フェンウェイパーク>も、
開幕を、間近に控えた深夜のフェンウェイパークは、シーンと静まり返って氷の中にいるような冷たさを感じる。
シゲ達は3塁側のダグアウトの上に立って、ぐるりと辺りを見渡した。
シゲたちは、<何かある・…>と感じながらも、嵐の前の静けさとしかいいようが無い。
三人はダグアウトの上から飛び降りグランド内に入った。
シゲたちは、キョロキョロと辺りを見渡しながらマウンドへ向かう。
そして、ラインを超えダイヤモンドの中へ、一歩、足を踏み入れようとした、その時。
眼には見えないが物凄い圧力が三人の体を押し返した。
三人はパッと素早く散らばり、背に掛けた龍虎狼の鞘から刀を抜いた。
そして、眼には見えないが何か得体の知れない妖気<圧力> 妖気のような圧力 の感じる空間へ
おのおのが竜虎狼を向け切り出した。
ヒュンヒュンと空気を引き裂く音がフェンウェイパークに響き渡る。
妖気を払いのけた三人はラインをまたいでマウンドに向かう。
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