フェンウェイパークの奇跡 | 第49話
「準備も何も、私は、まだ1球も投げていません
今後、試合で投げる事が 出来るのか どうかも 分からないんです 」
とシゲは謙虚に答えた。
「 みなさん お聞きになりましたか! なんと謙虚な応対でしょうか。
アメリカ中、いや世界中の野球ファンは
当然、忍者シゲは、ここメジャーリーグで大活躍し
殿堂入りを果たすと期待していますが ? 」
「今は …… もしマウンドに立つことが出来たなら、
全力を尽くしたいと思っています」
あくまでも謙虚な姿勢を貫き通す忍者。
しかし
記者達は その謙虚な言葉から 時折滲み出る
並々ならぬ自信を感じずにいられなかった
その後 二つ・三つ質問が出たが なぜだか盛り上がりには少し欠けた
報道陣は 忍者とメジャーリーグのミスマッチに圧倒されて
なかなか思うように質問が出来ないでいたのだ
「それでは会見を終了します」 GMは、と報道陣に云った
珍しく報道陣からは、不平不満の声は 聞かれなかった
「あっ 最後に 開幕戦には、ベンチに入るのですか ? 」
「イエス」とGMは 答えて入団会見は終わった
3000人ほどの報道陣は、席から立ち上がり、忍者シゲに大きな拍手を送った。
シゲは 席を立ち報道陣に一礼をした。
そして 顔を上げた瞬間、シゲは驚愕した
シゲの目の前にいる報道陣の顔という顔が、一瞬、 ライトを当てたように輝いたのだ
シゲは 反射的に 龍虎狼の柄に手を掛け殺気だった。
< 今のは …… >とシゲは後ろを振り返る
< FWPのどこからだ…… >
悲壮感を漂わせ 怪訝な顔をして グランドを見つめるシゲ、
「どうした?」とオーナーは シゲに声をかけた。
< 誰も…… 気づいていないのか……… >
入団会見後、報道陣たちは、明日の朝刊の一面トップは、
当然 ゛忍者の入団会見゛ と急いで社に帰って行った
そして、ほとんどすべてのメディアが撮った写真に 不思議な現象があらわれた。
ある新聞社のカメラマンの一人が 現像した写真を見て云った
「あれっ ! おかしいな 何だ この光は…… 」
「 どうした? 」と もう一人のカメラマンが聞いた。
「 この光は何だ!」
「 こんなの見たことないぞ― まるで忍者に 後光がさしているみたいだ 」
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