フェンウェイパークの奇跡 | 第49話

2023年1月18日

「準備も何も、私は、まだ1球も投げていません

 

今後、試合で投げる事が 出来るのか どうかも 分からないんです 」

 

とシゲは謙虚に答えた。

 

「 みなさん お聞きになりましたか! なんと謙虚な応対でしょうか。

 

アメリカ中、いや世界中の野球ファンは

 

当然、忍者シゲは、ここメジャーリーグで大活躍し

 

殿堂入りを果たすと期待していますが ? 」

 

「今は …… もしマウンドに立つことが出来たなら、

 

全力を尽くしたいと思っています」

 

あくまでも謙虚な姿勢を貫き通す忍者。

 

しかし

 

記者達は その謙虚な言葉から 時折滲み出る

 

並々ならぬ自信を感じずにいられなかった

 

その後 二つ・三つ質問が出たが なぜだか盛り上がりには少し欠けた

 

報道陣は 忍者とメジャーリーグのミスマッチに圧倒されて

 

なかなか思うように質問が出来ないでいたのだ

 

「それでは会見を終了します」 GMは、と報道陣に云った

 

珍しく報道陣からは、不平不満の声は 聞かれなかった

 

「あっ 最後に 開幕戦には、ベンチに入るのですか ? 」

 

「イエス」とGMは 答えて入団会見は終わった

 

3000人ほどの報道陣は、席から立ち上がり、忍者シゲに大きな拍手を送った。

 

シゲは 席を立ち報道陣に一礼をした。

 

そして 顔を上げた瞬間、シゲは驚愕した

 

シゲの目の前にいる報道陣の顔という顔が、一瞬、 ライトを当てたように輝いたのだ

 

シゲは 反射的に 龍虎狼の柄に手を掛け殺気だった。

 

< 今のは …… >とシゲは後ろを振り返る

 

< FWPのどこからだ…… >

 

悲壮感を漂わせ 怪訝な顔をして グランドを見つめるシゲ、

 

「どうした?」とオーナーは シゲに声をかけた。

 

< 誰も……  気づいていないのか……… >

 

入団会見後、報道陣たちは、明日の朝刊の一面トップは、

 

当然 ゛忍者の入団会見゛ と急いで社に帰って行った

 

そして、ほとんどすべてのメディアが撮った写真に 不思議な現象があらわれた。

 

ある新聞社のカメラマンの一人が 現像した写真を見て云った

 

「あれっ ! おかしいな 何だ この光は…… 」

 

「 どうした? 」と もう一人のカメラマンが聞いた。

 

「 この光は何だ!」

 

「 こんなの見たことないぞ― まるで忍者に 後光がさしているみたいだ 」