フェンウェイパークの奇跡 | 第62話

2023年1月19日

カウボーイは、あっという間に、大勢の記者達に囲まれ 身動きとれなくなった。

 

記者の1人が おもむろに カウボーイにマイクを向けると興奮して質問した

 

「 カウボーイ 忍者は、どこで秘密練習をしていたんだい ? 」

 

< ちぇっ、  またかよ…… >

 

「そんなこと、俺様が知るわけねえだろー

 

この前、初めて契約をした事を知っての 今日だぜ、

 

いくら地獄耳の俺様でも知らねーな」

 

「そんなことはないだろう、我々の考えでは

 

これはレッドソックスの機密事項として

 

全員に、緘口令 <かんこうれい> が敷かれているはずなんだ」

 

「何度云わせりゃ 気が済むんだ!  知らねぇ―ものは 知らねぇーんだ!」

 

「カウボーイ! 君は 我々の取材に協力しないつもりなのか?」

 

報道陣たちは、殺意を持った強烈な視線で 一斉にカウボーイを睨みつけた

 

< えっ…… > キョトン となるカウボーイ・ジャクソン

 

これまで 報道陣たちは 忍者シゲについての取材が全然進んでいない

 

報道陣の鬱憤の矛先が カウボーイ・ジャクソンに向けられる

 

「今 世界中の人々が

 

レッドソックスと契約した忍者シゲの動向を 知りたがっている

 

チームメイト及び、球団関係者は、

 

忍者シゲに関するものなら どんな些細な事であっても

 

我々報道陣に報告する義務がある事を肝に銘じてほしい」

 

と記者達の中から声が上がった

 

「そうだ そうだ 」

 

「肝に銘じて取材を受けてくれ」

 

< ちぇっ…  勝手な事を云ってやがる… >

 

「それじゃー カウボーイ 正直に答えてくれ 忍者の好きな食べ物は?」

 

「うるせぇーやい ! 知らねえと言っているだろうー

 

とっとと 帰りやがれー ったくもぉー」

 

いつもは恋人同志と呼ばれる程の間柄のカウボーイと報道陣

 

しかし、忍者の入団会見後から続く 余りに執拗な質問攻めに

 

とうとう堪忍袋の緒が切れたカウボーイは、

 

報道陣を かきわけ かきわけ 球場の中へと入って行った。

 

この様に至るところで選手と報道陣のトラブルが相次ぎ、

 

とうとうレッドソックス球団は

 

報道陣に対し無期限のクラブハウス・ロッカーへの出入りを禁止した