フェンウェイパークの奇跡 | 第68話
1回表
ウェイクは 3者連続空振り三振に斬ってとり快調な滑りだしでスタートした。
ベンチに帰ってきたウェインに チームメイトは皆 ハイタッチを求め 褒めたたえた。
「今日のナックルボールのキレは 抜群じゃないですか !
この調子が 9回迄続けば、凄いことになりますよ 」
とドセは ウェイクに近づき微笑んだ。
ドセが、キャンプで生まれてはじめてナックルボールを見た時の事だった。
新人ドセは キョロキョロと辺りを見渡し キャツチボールの相手を探していた
「ドセ、キャッチボールをしよう 」
投手陣の中では 兄貴分的な存在のウェインは、ドセを気遣った。
< わっ! あの天才ナックルボーラーのウェインさんが
俺に声をかけてくれた。 感激! >
ドセは これまでメジャーの打者がナックルボールにタイミングがあわず三振をして、
すごすごと ベンチに引き上げる姿を 何度も見ていて疑問に思っていた。
< どうして あんな遅い球を 打者は空振りするんだ ?
なぜ捕手は捕り損ねるんだ ? >
ドセはナックルボールを、
いや ウェイン投手が投げる一級品のナックルボールを甘く見すぎていた。
「 ドセ、 ナックルボールを捕る事が出来なかったら 走って取りに行くこと ! 」
<えっ! 俺が取る事が出来ないと…… ?
ナックルボールがどんなに変幻自在の変化をするといっても
たかだか100kmぐらいのスピードしかないのに 俺が捕りそこねる訳ないだろう……
俺も甘く見られたものだ >
「わかりました! 思いっきり イキのいいナックルボールを投げて下さい」
「それじゃぁ行くよ」ウェイクは 球速 約80kmのナックルボールをドセに投げた。
<うわっ、凄い 縫い目が はつきり 見えるぞ……>
< あれっ…… なんか変だぞ >
そして ボールが ドセの手前5mほどに来たとき ドセは反射的にグラブを出した。
と、その時 突然ボールは上下に激しく揺れ出した。
< うわっ! どっ… どうしよう… >
ドセは驚き 思わずボールを避けてしまった。
<怖かった、… >ドセは驚いた目をしてウェインを見た。
ウェインは ドセを見て笑っている
ドセは 恥ずかしそうに ボールを取りに走り出した。
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