フェンウェイパークの奇跡 | 第68話

2023年1月19日

1回表

 

ウェイクは 3者連続空振り三振に斬ってとり快調な滑りだしでスタートした。

 

ベンチに帰ってきたウェインに チームメイトは皆 ハイタッチを求め 褒めたたえた。

 

「今日のナックルボールのキレは 抜群じゃないですか !

 

この調子が 9回迄続けば、凄いことになりますよ 」

とドセは ウェイクに近づき微笑んだ。

 

ドセが、キャンプで生まれてはじめてナックルボールを見た時の事だった。

 

新人ドセは キョロキョロと辺りを見渡し キャツチボールの相手を探していた

 

「ドセ、キャッチボールをしよう 」

 

投手陣の中では 兄貴分的な存在のウェインは、ドセを気遣った。

 

< わっ! あの天才ナックルボーラーのウェインさんが

 

俺に声をかけてくれた。 感激! >

 

ドセは これまでメジャーの打者がナックルボールにタイミングがあわず三振をして、

 

すごすごと ベンチに引き上げる姿を 何度も見ていて疑問に思っていた。

 

< どうして あんな遅い球を 打者は空振りするんだ ?

 

なぜ捕手は捕り損ねるんだ ? >

 

ドセはナックルボールを、

 

いや ウェイン投手が投げる一級品のナックルボールを甘く見すぎていた。

 

「 ドセ、 ナックルボールを捕る事が出来なかったら 走って取りに行くこと ! 」

 

<えっ! 俺が取る事が出来ないと…… ?

 

ナックルボールがどんなに変幻自在の変化をするといっても

 

たかだか100kmぐらいのスピードしかないのに 俺が捕りそこねる訳ないだろう……

 

俺も甘く見られたものだ >

 

「わかりました! 思いっきり イキのいいナックルボールを投げて下さい」

 

「それじゃぁ行くよ」ウェイクは 球速 約80kmのナックルボールをドセに投げた。

 

<うわっ、凄い  縫い目が はつきり 見えるぞ……>

 

< あれっ……  なんか変だぞ >

 

そして ボールが ドセの手前5mほどに来たとき ドセは反射的にグラブを出した。

 

と、その時 突然ボールは上下に激しく揺れ出した。

 

< うわっ! どっ…  どうしよう… >

 

ドセは驚き 思わずボールを避けてしまった。

 

<怖かった、… >ドセは驚いた目をしてウェインを見た。

 

ウェインは ドセを見て笑っている

 

ドセは 恥ずかしそうに ボールを取りに走り出した。