フェンウェイパークの奇跡 | 第55話

2023年1月18日

「レッドソックスで ピッチャーをされているとか?」とシャロン

 

「はい、今年入団しました。 よろしく」

 

「よかったら、これから子供達と一緒に朝食をどう。」とシャロンは誘った。

 

「このような姿なので遠慮しておきます」とシゲが云うと、

 

八兵衛が横から口を挟んだ。

 

「兄者!何をいっているんです、こんな綺麗な先生が折角

 

゛朝食を ご一緒に゛ と云って下さっているのに断るなんて、とんでもねぇーです。

 

俺達も、まだ朝飯を食ってないんだし

 

ここは思い切って、美人先生のお言葉に甘えましょう。

 

まっ、まさか、 兄者、ホタルの姉御を 気にしちゃったりなんか したりして。

 

もぉー この色男は 角におけねぇー、このーこのー!」

 

八兵衛は、しきりとシゲを突っつく

 

「兄者、心配御座らん ホタルの姉御は、今スペインに遠征しとります。

 

姉御に ばれる訳はないし、たとえ、ばれたとしても朝食ぐらい、

 

どーって事ねぇーし。 問題ない問題ない。ここはひとつ八兵衛様にお任せを 」

 

と八兵衛はふんぞり返った。

 

「八兵衛、いい加減にしろ」と餓狼。

 

「少しは黙ってろ」と猛虎。

 

< フン うるせぇーやい オイラが何か言えば、すぐにイチャモンつけやがる >

 

八兵衛は餓狼と猛虎を睨みつけた

 

「構いませんのよ、子供達も 忍者さん ばかり見て、何一つ集中出来ないんです、

 

どうぞお入り下さい」とシャロンは忍者達に云った

 

シゲは もうひとつの木を見て シャロンに聞いた

 

「あの ……」

 

「はい、何でしょうか」

 

「これは、染井吉野という日本の桜の木ですが、こちらの木は、何という名前ですか」

 

「この木ですか、桜の一種らしいのですが、誰も名前は知らないんです 」

 

とシャロンは云った

 

「桜の一種……」

 

「これまで一度として花が咲いたことがない と聞いています 」

 

とシャロンは続けた

 

「一度も……」

 

「はい」

 

シャロンと シゲたちが食堂に入って来た。

 

子供たちは 地元レッドソックスに 投手として入団したシゲを見て 眼を輝かせた。

 

「うわぁー、忍者シゲだ」

 

「本物だ…  信じられない…」子供たちは口々に驚きの声を上げた。

 

「みなさん、こちらの席にどうぞ」

 

とシャロンが テープルの真ん中に四人の食事を用意した。

 

水、パン、目玉焼き、そして野菜が 少々、お皿の上にのっている。

 

「兄者 綺麗な先生じゃ ねぇーですか、桜の木のほかに

 

もう一つ楽しみがふえましたなぁー、こりゃー 参ったなぁー」

 

と八兵衛は 鼻の下を 伸ばすだけ伸ばしている

 

餓狼と猛虎は ジロリと八兵衛を睨んだ。

 

シゲたちは、懐からスリバチとスリコギ そして細い竹の筒を取り出した。

 

「何をなさいますの?」とシャロンは怪訝な顔をして聞いた。

 

「私たちは、忍者服で外にいる時には、顔を覆っている布を取らずに、

 

竹の筒を使って食事をします。すり鉢に食べ物と 水か野菜汁などを入れて

 

スリコギで、かき混ぜ 液状にします。そして この竹の筒で吸い込むんです 」

 

と云ってシゲは 竹の筒のストローを 口元へ持っていく

 

よく見ると 顔を覆っているマスクの口元あたりに 竹の筒が通るだけの切り込みが入っている。

 

シゲたちはスリバチの中のどろどろの液状のものを

 

チューチューという音を出しながら吸いだした

 

みるみる内に スリバチの中の液状のものは減っていった

 

シャロンと子供たちは眼を丸くして、忍者のテーブルマナーを見ている

 

全てを吸い上げたシゲは子供達に向かって一言云った

 

「絶対に真似をしないように」

 

それを聞いたシャロンは「プッ…」と吹き出してしまった

 

子供達も微笑んでいる。