フェンウェイパークの奇跡 | 第52話

2023年1月18日

3月26日 深夜のFwp

 

「餓狼 猛虎 八兵衛。 春は もうそこまで来ているんだろうか… 」

 

< まったくもぉー、兄者は 何も知らねぇーんだな 春は6月まで来ねぇーのに…>

 

と八兵衛は、ちらっと シゲを見た。

 

「日本では 春には 桜が咲くらしい、俺は、桜を写真でしか 見たことがない

 

一度 本物を見てみたい 」と星空を見上げてシゲは云う

 

「ボストンでは 桜が咲くのだろうか … ?」とシゲは 呟いた。

 

「ひょっとすると ボストンでも桜が咲くかもしれませんよ」と猛虎が答えた。

 

「そうだといいな、明日 ボストンの街を散歩してみるか」とシゲは云い、

 

忍者島の地酒を 大きな盃になみなみと注ぎ 猛虎と餓狼、八兵衛に廻した

 

< 猛虎の野郎は バカじゃないのか !  なにが ゛ ひょっとすると ゛ だ。

 

ワシントンでの 日本の桜・染井吉野の花見を知らねぇ―のか!

 

本当にバカな野郎だ > と八兵衛は猛虎を睨んだ

 

< 兄者も兄者だ。 少しはアメリカの事を勉強して来なきゃ、

 

恥をかく事になるのに……>

 

と八兵衛は、シゲを横眼でチラチラと見ている

 

シゲは 謎の忍者軍団の後継者ではあるが、これまで上下関係など一切考えた事がない

 

シゲたちは 幼馴染であり、まったくの対等なのだ。

 

そこにいるのは男と男、そして、男と女。

 

三人はシゲに対し、呑み仲間のような気易さがあるので 酒は実に旨くなる。

 

「 兄者、散歩するって…… どこか…… 心あたりでも…… 」と八兵衛が聞く。

 

「 いや  気の向くままに歩こうかと 」シゲは云う。

 

「困るなぁー 兄者、 誰か忘れちゃー  いませんかってんだ!」

 

と八兵衛は、シゲを見て云った。

 

「おお、そうか そうだったな、八兵衛ならボストンは詳しいはずだな」とシゲ

 

「詳しい なんてもんじゃー ねぇですぜ 兄者

 

ボストンと云やぁー 八兵衛様、 八兵衛様と云やぁー ボストンと、

 

相場は決まってますがなぁー」と八兵衛は、ふんぞり返って笑った

 

<また始まった…>

 

<俺は知らねーぞ> 餓狼と猛虎の二人は お互い目で会話した

 

シゲたちは、昔話に花が咲いた

 

物音一つしないFWPに、笑い声が響いている

 

猛虎と餓狼、八兵衛は、

 

この なんとも言えない、シゲとの安らかな時を 一番楽しみにしている

 

この至極の時があるから、三人はシゲの側に居るんじゃないかと思う時もある

 

しかし、この安らかで、ゆったりとした時の流れも いつまでも続かなかった

 

「おいでなすった」とシゲは 大盃に残った酒を一気に飲み干し、

 

背の竜虎狼の柄に手をやり、いきなり抜刀した。

 

猛虎・餓狼・八兵衛も、立ち上がり三塁側ベンチの方に眼をやる

 

風魔の刺客と思われる八つ影は シゲ達の酒宴の席に切り込んできた。