フェンウェイパークの奇跡 | 第42話

2023年1月18日

「おい!餓狼・猛虎。これからは、天下の八兵衛様が殿を務める。

 

お前達は兄者の側にピタッと付いて、護衛をしながら先に行け。分かったな!」

 

と八兵衛は、胸の前で腕を組み、目を細めながら満月を見つめ云った。

 

そして、餓狼と猛虎を睨み。

 

「二人とも抜かるんじゃねぇーぞ  エッヘン」と八兵衛は踏ん反り返って云った。

 

「八兵衛!お前は何をバカな事を云ってるんだ。

 

ここに立ち始めて三日目に根を上げるような奴に、殿など勤まる筈がないだろう。

 

ここは三銃士筆頭の餓狼様に任せておけ。分かったな!」と餓狼が云った。

 

「餓狼!  どうして お前が三銃士筆頭なんだ? 兄者の代わりに

 

殿<しんがり>が つとまるのは勇猛果敢な猛虎様を置いて他にいない。」と猛虎

 

「お前達二人は、頭が どうかしてるのか ?

 

゛何が筆頭だ、何が勇猛果敢だ゛ 笑わせるな!

 

二人とも明日一番に病院に行って、そのスイカ頭を診てもらえってんだ。」

 

「何だと!」と餓狼が八兵衛の胸倉を摑んだ。

 

「何だ餓狼!やるのか!」八兵衛も掴み返す。

 

「まぁまぁ、そうカッカするな」と猛虎が2人を引き離そうと近づくと、

 

餓狼と八兵衛は片方の手で猛虎の胸倉を掴む。

 

「何が勇猛果敢だ!」

 

「うるさい、何が筆頭だ!」

 

「頭がおかしいのは八兵衛、お前だ」

 

「何だと!」

 

「何だと!」

 

「何だと!」

 

三人は、押しくら饅頭を始め出した

 

<餓狼・猛虎・八兵衛…… ありがとう……

 

お前達は絶対に死なせない…… 絶対に!……>

 

シゲは 夜空に浮かぶ 青白い光を放つ満月に目を移した。

 

<絶対に失敗は許されない。>

 

命を預かる怖さを、シゲは 今、それをひしひしと感じている。

 

<不安だからこそ万全を期す、その不安は俺達に、必ず力を与えてくれるはず……>

 

満月は 優しい顔をして忍者たちを見つめている

 

しかし、ものの一時間もしないうちに、

 

静寂に包まれていた深夜のFWPに、突然 変な音が響きだした。

 

ぐーごー   ぐーーごーー   ぐーごー。

 

< 何の音だ……? >  シゲ・餓狼・猛虎は、あたりを見渡した。

 

<また こいつか……>

 

< この野郎…… >

 

八兵衛が、イビキをかいて 船を漕ぎ出したのだ。

 

<よく立って居眠りなんぞ出来るもんだ……>

 

餓狼は呆れた顔をして、八兵衛を見つめている。

 

<さっきの威勢は何処に行ったんだ…… ふざけやがって…… >

 

と猛虎は八兵衛を睨む。

 

<俺の悪い癖だ… 夢中になると前後の見境がつかなくなってしまう ……

 

しかし、今のような精神状態になっているのは、これが生まれて初めてだ・・・>

 

とシゲは 目を閉じた。