フェンウェイパークの奇跡 | 第40話

2023年1月18日

「お前たちは、ここに立って今日で20日近くになるだろう。

 

よく我慢しているよなぁー。

 

おいらは まだ3日目だけど、もう根をあげそうだよ。

 

兄者は、どうしてこんな薄気味悪くて、

 

おまけに凍えそうなグランドの上に立つことを、思いついたんだろう、

 

何か意味でもあるんだろうか…

 

お前たちは 何か聞いてないのか 」と八兵衛は二人を見た

 

餓狼と猛虎は あいも変わらず黙ったままで前を向いている。

 

「兄者の悪いクセ なんだよなあ―。 子供の頃から1つのことに夢中になると、

 

前後の見境がつかなくなってしまうんだから。 あれは いつ<何時>だったっけ

 

〃鯛を釣って親父に食べさせる〃と云ったまでは、

 

さすが兄者と惚れ直したんだけど、それからがいけない。

 

三日三晩、寝ずの釣りだ。

 

兄者は糸を垂れてから ひと言も話さずに海を見ていたもんなー、

 

こちとら三日目に意識が朦朧となるや.すかさず波にのみ込まれ、

 

危うく死ぬところだったもんなーついていけないよ 」と八兵衛は ため息をついた

 

猛虎がギロリと八兵衛を睨み云った。

 

「兄者は ついて来いとは云わなかった 」

 

<うっぐっ…> 目をむく八兵衛

 

「そして、三日目に鯛を釣った」と餓狼も八兵衛を睨んだ。

 

「でも、ものには限度がある」

 

「兄者は ついて来いとは云わなかった」

 

「そして、三日目に鯛を釣った」

 

「そうです、そうです、兄者は凄い、偉い、たいしたものです」

 

「八兵衛、俺が偉いのか?」

 

「あっ! 兄者」と驚く八兵衛。

 

「偉いも何も、凄いの一言につきますぜ。

 

こんな薄気味悪い球場に毎晩来ては.何をするでもなく、

 

ただひたすら 立つだけ。 ここで立つことに、

 

どんな意味があるんです?」と八兵衛が問うた。

 

「意味か…… ?   うーん…意味などない」とシゲは困った顔をした。

 

「意味がない??」と目を剥く八兵衛

 

「立つしか、ここに いる事しか 方法が思いつかないんだ」とシゲは答えた

 

「じゃー、4人で先発投手のようにローテーションを組めばどうです。

 

ひとりは立ちあとの三人は休むと」と八兵衛は云った

 

「八兵衛よ。無理はしなくていい、気が向いた時に来ればいい」

 

とシゲは笑って云った。

 

「兄者の言う通り、もう帰って寝ろ!」と餓狼は素っ気なく云う

 

「熱いシャワーが待ってるぞ!」と猛虎も続けた