フェンウェイパークの奇跡 | 第 4 話

2022年7月28日

次の日の夜、三人はビシッと正装で決めて、

 

午後10時10分前に「屋台八兵衛」の暖簾をくぐった。

 

カウンターに座っている一人の老人が鋭い眼光を3人に向けた。

 

「こちらがボストンレッドソックスのオーナー、球団社長、GMです。」

 

と八兵衛は総帥に紹介した。

 

「始めまして私はボストンレッドソックスのオーナーです。よろしく」  「球団社長です。よろしく」

 

「GMです。よろしく」と三人は総帥に握手をしながら云った。

 

3人は総帥の手がマシュマロのようなフワフワした感触に驚いた

 

忍者というのは、もっと、ごつごつとした手の持ち主だと思っていたからだ。

 

総帥は挨拶もそこそこにして本題に入った。

 

「バンビーノの呪いの事だが………」と総帥は少し云い淀み、

 

突然、暖簾越しに顔を出しフェンウェイパークを鋭い視線で睨んだ。

 

すると

 

その瞬間フェンウェイパーク全体が、眩い光を放って一瞬大きくなったように

 

総帥には見えた。  その途端、総帥の顔は見る見る険しくなり出した。

 

<……今のは……まさか……>悲壮感を漂わせる総帥。

 

「どうなさいました……」と八兵衛。

 

「いや………」総帥は覚悟を決めて3人の方を見た。

 

「今の段階では、まだはっきりした事は言えないが、バンビーの呪いは、

 

これまで世界の多くの野球ファンに呪いとして何かのメッセージを送り続けてきた。

 

噂では、そのメッセージはBOSをワールドシリーズ制覇から遠ざけるという意味を込めていた。

 

しかし、RDSはws 完全制覇を果たした。

 

そうなればベーブ・ルースがオーナーたち三人に送ったメッセージの意味は

 

これまでとは、まったく違った別の意味を持つことになる。

 

ひょっとするとオーナー達へのメッセージが、

 

本当の意味でのバンビーノの呪いになるやも知れん……」

 

総帥は、うつろな目をして一点を見つめたまま話した。

 

「この呪い、いや、今ではベーブ・ルースからのメッセージは…………」

 

と総帥は、そこまで云って目を閉じた。

 

そして、意を決したように、大きく眼を見開くとオーナー達三人を睨んで話出した。

 

「フェンウェイパークと密接に関わっていると考えて間違いはないだろう。」

 

「フェ、フェンウェイパークに……」とオーナーは、驚いて聞き返した。

 

「そうじゃフェンウェイパークにじゃ」と総帥は断言する。

 

三人はお互いに顔を見合わせて驚き戸惑った。

 

オーナーたち3人は、この忍者の総帥が何を云いたいのか分からなかった。

 

「皆さんは 死後の世界をどう考えておられる 」と総帥は3人に問うた。

 

「死後の世界ですか?……」とGMは戸惑う。

 

「天国と地獄と云う事ですか 」とオーナーは聞き返す。

 

「大きく言えばそうなる」と総帥が答える。

 

「バンビーノの呪いの事だが ベーブ・ルースが、

 

自分の死をそのまま受け入れたのであれば、呪いが噂されるような事はなかったのでは……」

 

と総帥は言い終えるとお猪口の酒を飲み干した。

 

少しの沈黙の後、総帥は、思い出したように話を続けた。

「もしベーブ・ルースが現世でやり残した事があり、

 

その事に物凄く悔いを残していたのであれば、少し話がややこしくなって来る。」

 

「……」3人は何も言わずに黙っている

 

総帥は、一呼吸おいて しんみりと話だした。

 

「人が死ねば天国、地獄に行く場合と現世をさまよう場合とがある、もしルースが自分の死を、

 

何かの理由により受け入れる事が出来ない時には、

 

今 我々の周りを 彷徨っている可能性がある、 彷徨つていると仮定した場合、

 

現世の人間に憑依<のり移る事>することにより遣り残した事を行う場合があるが、

 

ベーブ・ルースは心優しき男だったのだろう、憑依せずに我々の周りを、

 

さまよい続けておるのじゃろー」三人は黙って聞いている。

 

「ルースは現世で、何かやり残した事はないのかな、大きな夢があったとか…… 」

 

と総帥は三人に尋ねた。

 

「調べてみないとわかりませんが、今は見当がつきません。」とオーナーは云う。

 

「まず調べてからの事になるが、フェンウェイパークに何かあるとわしは睨んでおる。」

 

総帥は、フェンウェイパークが物凄い妖気に覆われているとまでは云わなかったが、

 

総帥の身体に流れる忍者の血は、得体の知れない妖気を、ひしひしと感じていた。

 

三人に重い空気が流れ長い沈黙が続いた。

 

「まぁ、今、悩んでも仕方が無いですから」と八兵衛は総帥と3人のお猪口に酒を注いだ。

 

なみなみと注いだお猪口いっぱいの酒を四人は一気に飲み干した。

 

そしてオーナーが切り出した。「それで私たちレッドソックスは どうすればいいんでしょうか。」

 

3人はしげしげと総帥を見た。