フェンウェイパークの奇跡 | 第29話

2023年1月18日

「おいドセ、話が違うぞ、もっとストライクを投げろ」

 

ゴルビーは頭から湯気をだして怒っている。

 

ヤングコーチはドセの速球を初めて見て驚いた。

 

“こんな凄い速球を投げるとは……! どうしてストライクが入らないのだ?"

 

高校生の時に1試合23奪三振の記録を作ったと聞いたが、何故なんだ…>

 

これから打席に入るクリーンアップの3人もドセの剛速球に驚いている。

 

< こんな凄い速球、オレに向かってきたら、逃げられないぜ! >。

 

カウボーイは急に腹が痛いとベンチに下がった。

 

次の日もドセは打撃投手をさせられた。

 

前日、結局2人の打者に28球投げてストライクはたったの3球、しかし ドセには大きな進歩だ。

 

これまで1球たりともストライクが入っていないからだ。

 

はじめに打席に入ったのは カウボーイだった。

 

カウボーイはドセに、ニコッと笑って構えた。

 

<お手柔らかにな 小僧>

 

ドセは少し緊張した

 

<ベン主将とコイツが 今メジャーで最強の打者だろう。

 

この二人を抑えればオレがNo1だ!>

 

ドセは少し、アドレナリンが出たのか表情が引き締まった。

 

< やはり、思ったとおりだ ! >

 

ヤングはドセの表情を見のがさなかった。

 

ドセの表情が引き締まると、投球が明らかに変わった。

 

ドセは肢体をムチのようにしならせ、カウボーイに第一球を投げた。

 

素晴らしい速球が外角低めに決まった

 

報道陣から、どよめきが沸いた。

 

<素晴らしい!>とマーチンは云い、眼を輝かせてヤングを見て頷いた。

 

< このガキ、凄い速球を投げるじゃないか ! >カウボーイも内心舌を巻いた。

 

しかし その後は5球連続ボール。

 

カウボーイは まだ1度もバットを振っていない。

 

そして 7球目ドセの手元が狂った。

 

ドセの投げた速球は カウボーイの頭をめがけて飛んできた。

 

カウボーイは ひっくり返って、かろうじて速球を避けた

 

「 小僧 !  ふざけるな ! 」

 

カウボーイは 立ち上がるや バットを放り投げ、ドセに向かって走りだした

 

「やめろ カウボーイ!」 すぐに まわりにいるチームメイトが止めに入る。

 

「離しやがれ ! ふざけるな小僧 ! ナメやがて ! ぶっ殺してやる!」

 

怒りが収まらないカウボーイは、そのままロッカーに帰ってしまった

 

一部始終を見ていた者は 誰も打席に入ろうとしない。