フェンウェイパークの奇跡 | 第 7 話

2022年7月28日

「手裏剣を防ぎきれかった忍者の周りいる者が被害を受ける。

 

だからそんな忍者打者は退場にしている。

 

皆さん、ボールを手裏剣に置き換えれば、理解していただけると思います。」

 

「投球がストライクゾーンを通過する。

 

それは、忍者野球では、絶対やってはならんことなのじゃ 絶対にな!」

 

「忍者打者と忍者投手の対戦、いや厳密には決闘がMLBとの一番大きな違いだ。」

 

と総帥は云った。<余程やってはいけないんだな……>

 

温和な表情で話していた総帥の形相が みるみる険しくなって行く様を見て

 

三人の表情も いままで以上に引き締まる。

 

 

忍者投手はマウンドに登ると、投球練習を始めた。

 

総帥は懐から三つの木のボールを取り出した

 

「これは記念に」と総帥は縫い目も綺麗に掘ってある木のボールを三人にを渡した。

 

「触ってみてどうです、固いでしょう。当たったら痛いの なんの、」

 

と八兵衛は顔を歪めて云った。

 

総帥が云うには通常のメジャーリーグの使用球の5 %増しの重量でつくっているらしい。

 

<かっ 固い……命が……いくつあっても足りない……>

 

<今のMLBの打者で打席に立とうとする者がいるだろうか……>

 

忍者投手は、2回投げることが出来る。

 

その2回の内に、一球でもストライクを取るか、

 

死球すなわち、打者に当てれば勝ち、ワンアウトになる。

 

「忍者投手は、打者に対し、2球まで投げることが出来る。

 

2球ともボールならMLBで云う四球になり、打者は一塁へ行く。」

 

「忍者投手にとっての一番の目的は、忍者投手は忍者打者に、ボールをぶつける事なんじゃ」

 

「えっ、ぶつける……」三人は総帥の言葉に狼狽した。

 

打者は、投手に当てられない様に、ストライクを取られないように、

 

木刀でフィールド内に打ち返すんじゃ、

 

忍者打者が、フェアーゾーンへ打球を打てば、後は、メジャーリーグのルールで進めていく。

 

木刀を持った忍者打者が ホームベースをまたいで

 

一塁ライン上のマウンドに立つ忍者投手と正対した。

 

「皆さん、百聞は一見にしかず。じっくり見てみよう。」

 

忍者審判が、「プレイボール」と高らかに宣言した。

 

マウンド上の忍者投手は、手に木で作ったボールを持ち、

 

身体をかがめて捕手のサインを見ている。忍者投手が投球動作に入った。

 

忍者打者は、左打席にはいり、腰をかがめ、右手で木刀を握り、左腰に持って行く。

 

そして、左手を添えた。

 

忍者打者は、向かってくるボールを、右手で持った木刀で払い打つつもりだ。

 

忍者投手が振りかぶって、第一球を投げた。

 

「あっ!」GMが目を見開いた。

 

忍者投手の投げたボールは忍者打者の顔面へ突き進む。

 

忍者打者は、まったく動じず、顔面を直撃する寸前、

 

木刀を目にもとまらぬ速さで操り、ボールを払うようにして打ち、ジャストミートした。

 

打球は、あっという間にライト・センター間を真っ二つにした。<えっ、追いついた!>

 

驚くのはまだ早い。完全に抜けたと思われた打球に、

 

ライトが追いつき、素早く3塁に送球した。<打球に追いついたのに、どうして3塁に……>

 

とGMは思ったが、打者走者を見て驚き納得した。